月例会スケジュール

12月個人研究発表

日時:12月16日(土)午後2時から
場所:東洋大学白山キャンパス6号館6212教室

内容:個人研究発表(以下五十音順)

1.長浜麻里子「Gaskellの“Crowley Castle”(1863)――ゴシック小説で語られる怖い現実」

エリザベス・ギャスケルの「クローリー城」は、1963年『オール・ザ・イヤー・ラウンド』誌のクリスマス号のために執筆された短編ゴシック小説である。一説には、早急にお金が必要になったために執筆したともいわれているが、「ゴシック」はギャスケルが力を注いでいたジャンルであり、数多くの作品が執筆されていることが知られている。実際、ディケンズが1859年に創刊したこの雑誌にも、「魔女ロイス」(1859)、「曲がった枝」(1859)、「灰色の女」(1861)、「暗い夜の事件」(1861)など、短編ゴシック小説が複数寄稿されている。

本作品の舞台は、サセックス州の一古城、およびフランスのルイ・ル・グランの貴族の館であるが、ここに幽霊や幻覚、怪奇現象は出現しない。語り手は、暴力・殺人事件をとおして、ある上流階級の一族が崩壊していく顛末を物語る。このような事件以上に注意深く語られるのは、家父長制の権力構造のなかで抑圧された女たちの不安・孤独・嫉妬・復讐心である。これが閉塞した人間関係のなかで、狂気に似た異常な心理状態となり、陰惨な事件の原因になるのである。登場人物の誰もが、その時々の状況に合わせて自己正当化した結果、立場の弱い者がより抑圧される結果となるが、ゴシックというフィクションの中であってさえ、道徳心を失って罪を犯し、他人にとり憑き執着する人物が許されることはない。

ギャスケルのこの作品は18世紀の上流階級の悲劇を扱いながら、現在なお解決されていない社会と家庭内の問題を連想させる。本発表では「クローリー城」に描かれるクローリー家の一人娘テレサと乳母ヴィクトリンとの関係を中心に、ギャスケルが描き出そうとした社会と家庭の問題について考察する。あわせて、ギャスケルがなぜゴシックに力を注いだのかについても考えたい。

2.深澤明利「文学における『真実らしさ』――文学批評における擬人法を中心に 」

近年、欧米の文学研究において、大学における文学の研究および教育の有用性や価値を問い直す、「文学有用論」とでも呼ぶべき議論が静かな盛り上がりを見せている。なぜ文学を読むのか、文学研究の意義とは何かといった問題が改めて考察されているのである。もちろん、こうした研究の背景には、文学の意味や価値を疑問視する社会の風潮がある。

本発表では、文学に特有の知とは何かを探る試みの一つとして文学批評における擬人法を主として考察する。とりわけ、文学作品そのものを認識の主体として見立てたうえで議論を展開する批評を取り上げる。そのうえで、欧米における2000年以降のこの種の研究動向の一端を探り、若干の考察を加えることを目的とする。