秋の理論研究のお知らせ

The Anarchy of Empire in the Making of U.S. Culture を今、どう読むか―「内なる帝国」と「冒険小説」」

日時:
11月15日(土)14時
12月20日(土)14時
場所:東京労働会館地下小会議室(大塚)

概要:
11月:カプランの主著The Anarchy of Empire in the Making of U.S. Culture(以下The Anarchy of Empire)は、家庭=国内的なるものと帝国=国外的なるものが、実は協働してアメリカの領土拡大に貢献していたことを19世紀半ばから20世紀初頭までの小説・家事マニュアル・雑誌・映画等の文化における表象分析を通して明示した研究書である。つまり、それは理論書ではなく、これまで見逃されてきた/隠蔽されてきたアメリカの、歴史上の帝国性を表象分析によって明らかにした書物なのである。と同時にThe Anarchy of Empireは、帝国主義を過去の歴史ではなく、現在の感情・想像・日常の中に見出す本でもあり、今回、理論研究で取り上げるにあたっては、回顧的にカプランの業績を振り返るのではなく、家庭と帝国の親和性を明らかにしたその視点を適応し、現在、家庭的なるもののなかに何が潜むのかを考える機会になれば、より具体的には、日ごろ、問題ある対象とみなされにくい「善意」「人道」「ケア」の語彙に潜む支配性を問い直す機会となればと考えている。

12月: 11月に女性的・家庭的領域における帝国主義の論理を検討したこととは対照的に、12月は男性的・冒険的領域における国外拡張を通じて、如何なる市民的主体が生成されるかを検討する。テキストはMartin GreenのSeven Types of Adventure Tale。特に帝国主義と関わりの強いThe Frontiersman StoryとThe Wanderer Storyの章(5章と7章)を取り上げる予定である。決して新しいテキストではないが、冒険小説があくまで娯楽の対象とみなされ、これまでアカデミズムにおける十分な検討の対象となってこなかった事情を鑑みれば、カプランの著作を経由して、新たな冒険小説の読み直しが生まれる可能性があると期待している。

基本テキスト:
11月:Amy Kaplan. The Anarchy of Empire in the Making of U.S. Culture. (Cambridge: Harvard UP, 2002)

12月:Martin Green. Seven Types of Adventure Tale. (University Park: The Pennsylvania State UP, 1991).

 

 

2026年作品研究のご案内

2026年は会員の皆様と共にウィリアム・フォークナー『野生の棕櫚』を研究していくことに決まりました。

例会、大会に先立ち作品を読まれる際に、原書はヴィンテージ・インターナショナル版をお勧めします。

https://www.amazon.co.jp/Wild-Palms-VintageInternational/dp/0679741933/ref=tmm_pap_swatch_0

翻訳は2023年に中公文庫より出版された加島祥造訳が比較的入手しやすくなっております。

https://www.amazon.co.jp/dp/4122074479?ref=ppx_yo2ov_dt_b_fed_asin_title

現在、ワークチームの皆様には例会で読む論文の選定作業に取り組んでいただいております。

詳細が決まり次第、NN、HP、MLでお知らせいたしますので、ご確認ください。

 

第56回全国大会終了のご報告とお礼

福島大学で行われました第56回新英米文学会全国大会が無事に終了いたしました。

久しぶりの地方開催となった今大会も多くの方々のご尽力のもと、大きなトラブルもなく終えることができました。皆さまに深くお礼申し上げます。

あいにく22日と24日に東北新幹線が一時運転見合わせとなり、大会前日の運営委員会や大会終了後の帰宅に影響が出ました。

その一方で、大会運営は大成功だったこと、懇親会では地元の食材に舌鼓を打ちながら楽しめたこと、大学キャンパス内にいるネコに癒されたことなど、思い出深い大会となりました。

改めまして、会場をご提供くださった照沼かほるさんに感謝しつつ、この有意義な大会を今後も続けられるよう、運営委員一同頑張ってまいります。

暑い日が続きますが、皆さま、どうぞご自愛ください。

 

【大会へご参加される皆さま】eduroamアカウントの発行と24日の昼食について

福島大会を来月に控え、eduroamについてのご案内です。

福島大学でご自身のパソコンをネットにつなぐ際、所属する大学でeduroamアカウントを発行することが可能であれば、事前にご本人用アカウントをご準備ください。福島大学で無線接続時のSSIDで「eduroam」を選択することによってネットに接続することが可能です。

もし、ご本人用アカウントを発行することができない場合は、リンク先の内容をご確認いただき、
① 氏名
② メールアドレス
③ 使用PC
④ 使用OS
⑤ セキュリティソフト名と有効期限
を、8月11日(月)までに曽良裕美子(alice.whiterabbit.2819[あっとまーく]gmail.com)までお知らせください。

よろしくお願いいたします。

また、24日(日)の昼食は各自でご用意ください。
その日、福島大学は購買・食堂ともに閉店しております。

 

第56回全国大会について

1.第56回全国大会のご案内(8.21更新)

第56回全国大会を以下の日程にてハイブリッドで開催いたします。
日時:8月23日(土)、24日(日)
場所:福島大学行政政策学類棟2階大会議室

以下の大会参加申し込みフォームに必要事項をご入力ください。
なお、ご欠席される方は総会委任状のご協力を何とぞお願いいたします。
皆さまのご参加をお待ちしております。
https://forms.gle/bZGQRQ4yMXQPYiDk7

日程:
☆8 月 22日(金)大会議室
13:00-16:00 大会実行委員会、運営委員会(各委員のみ)

★23日(土)大会議室
12:50-13:00 会長挨拶、連絡事項
13:00-14:00 個人研究発表
水戸俊介「ポーと/のメランコリー――バラッドの「アナベル・リー」」

14:00-14:30 休憩
14:30-16:00 総会
17:30-19:30 懇親会(場所「庵ぐら 福島駅前店」)

★24日(日)大会議室
10:00-12:00 シンポジウム E・M・フォースター『ハワーズ・エンド』研究
司会:高橋大樹
〈基調講演〉
浦野郁(光文社文庫版『ハワーズ・エンド』訳者)
「『ハワーズ・エンド』をもう一度――新訳刊行に込めた思い」
〈基調報告〉
三村尚央「フォースターのリベラリズムを再検証する――『ハワーズ・エンド』の「失敗」の美学を読み直す」
板谷洋一郎「『ハワーズ・エンド』における非嫡出子・精神障害の問題―ヘレンとその子をめぐって」

12:00-13:00 昼休憩(弁当は各自用意)
13:00-15:00 シンポジウム(続き)
15:00-15:10 休憩
15:10-15:30 反省会

発表概要

『ハワーズ・エンド』をもう一度――新訳刊行に込めた思い
浦野 郁

本年一月に光文社から新訳が刊行されたE. M.フォースター『ハワーズ・エンド』について、訳者としてまたフォースター研究者の立場からお話をさせていただく。まず新訳に込めた思いや翻訳の工夫、苦労などについてお話した上で、百年以上前に書かれた本作品を今読むことの意義を、フォースターに影響を受けた現代の作家や作品を紹介しながら探っていく。時間に余裕があれば、実際に今年から演習授業で本作品に触れている学生たちの反応も伝えたい。

「フォースターのリベラリズムを再検証する――『ハワーズ・エンド』の「失敗」の美学を読み直す」
三村尚央

本報告では、『ハワーズ・エンド』で展開されるリベラリズムの思想を再検証する。「ただ結び合わせることさえできれば」というエピグラフに象徴される理想は、実際にはことごとく「失敗」するものとして描かれる。それはまるで、そのような試みは、今生ではけっして成功することはない、という諦念にも見える。本報告では、フォースターの「リベラルさ」をめぐる先行研究の議論も参照しながら、彼が20世紀初頭に『ハワーズ・エンド』で検証した思索の可能性を、現代において引き継いでみたい。

『ハワーズ・エンド』における非嫡出子・精神障害の問題―ヘレンとその子をめぐって
板谷洋一郎

『ハワーズ・エンド』で婚外子として生まれるヘレンの子は、継承やつながりといった観点から論じられることが多い。そうした批評において、ヘレンの子は、ときに最終場面が喚起する牧歌的情景も含め、階級や価値観の異なる人々をつなぐ架け橋的存在とみなされている。そのような見解は受容可能だとしても、やや不可解な点が残る。ヘレンがハワーズ・エンド(イングランド)にとどまり、彼女の子が邸宅を継ぐことが描かれるのは最終章においてであり、その直前まで彼女は自発的国外居住者としてドイツで暮らすつもりだった点である。ハワーズ・エンドに誘導され、マーガレットと再会したとき、ヘレンはなぜ自分はイングランドに住めないと言うのだろうか。彼女の発言の背景には何かしらの社会的事情があるのだろうか。本稿では、20 世紀初頭のイングランドにおける非嫡出子の問題と、優生学が社会に浸透するに伴い、取り沙汰されるようになった精神障がい(当時は精神薄弱)の問題を取り上げることで、婚外子を懐妊したヘレンがイングランドに残れない、自分は許されないだろうと言った背景を考察し、フォースターがヘレンの子供に託した思いを改めて推し量りたい。

2.大会個人研究発表者募集のお知らせ

8月23日(土)に行われます個人研究発表をご希望の方は曽良裕美子までご連絡ください。
よろしくお願いいたします。